令和4年4月より、日本海新聞紙に‟但馬を結んで育つ会リレーコラム~地域の医療・福祉のあした~”が掲載されております。
令和6年7月は由良温宣副代表の寄稿です。
『「お薬手帳」を利用していますか?』
NPO法人但馬を結んで育つ会副代表理事 由良 温宣
2021年3月、東日本大震災が発生したとき、私は仙台の薬局に勤務しておりました。震災直後から薬局には多くの方が薬を求めて来局されました。この時に初めて、処方箋なくお薬をお渡しすることとなりました。このことは、医師の指示である処方箋に基づいて調剤し、お薬をお渡ししていた私たちにとって非常に大きな出来事でした。
処方箋なくお薬をお渡しする条件として①普段当薬局にて調剤している方②症状が比較的安定している方③「お薬手帳」などを持っている方―としました。①については「非常時になぜ?」と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、たとえ服用している薬が分かっても、これまでの経緯が分からないと安易に薬をお渡しすることはできませんでした。②については医師の判断が必要な場合があり、薬局だけでは対応が難しいためです。
③については、お薬には似ている名前のものが多くあり、口頭だけの情報では違うお薬を渡してすまう可能性が否定できないためです。お薬をお渡しした後、その全てを記録して医師に状況を報告しました。
数カ月後、今度は被害の大きかった石巻の薬局に向かいました。この頃には全国から医師をはじめ多くの医療スタッフが東北に来てくださり、避難所でも医師の診察の下、処方箋が発行されるようになっていました。この時の診察時に参考にされたのも「お薬手帳」でした。
医療と福祉が切れ目なくサービスを提供するには、携わる私たちの情報の共有が不可欠です。先に述べた非常時だけではなく、普段から情報共有の一つの手段として「お薬手帳」をぜひご活用ください。
最後になりますが、貴重な情報を活かすためにも、医療福祉に携わる私たちがお互いを知っていることが重要になります。この但馬を結んで育つ会を通じて、私たちの顔の見える関係性をさらに強固なものとし、より良いサービスの提供に努めてまいります。
日本海新聞 2024年7月27日土曜日 024ページ
©新日本海新聞社