活動レポート
2025年01月28日
日本海新聞コラム記事~地域の医療・福祉のあした~31

令和4年より、日本海新聞紙に‟但馬を結んで育つ会リレーコラム~地域の医療・福祉のあした~”が掲載されております。

令和6年10月は西池匡理事の寄稿です。

『分水嶺を超えた福祉目指して』

介護保険制度が導入され四半世紀がたとうとしています。それまでから多くの人たちが今後の日本社会の在り方、少子高齢化社会の対応について、予測し、想像し、対応を協議していました。

 その結果として思い切って導入されたのが介護保険制度でした。その議論の中で団塊の世代(第2次世界大戦が終戦した直後に生まれた人々を指す。第1次ベビーブームに誕生した800万人を超える人々。段階の世代は昭和22~24年生まれで、2024年時点の年齢は75歳から77歳に当たる)が、後期高齢者(75歳以上)になる30年後の25年の社会をイメージして制度設計をしなくてはならないといわれていました。

 その30年間が瞬く間に過ぎ、今まさに25年が迫りました。介護保険導入後も重ねて制度を調整し、試行錯誤しながら「誰もが(高齢になっても、障害を持っても、認知症になっても)人間としての尊厳を持ち、愛した地域で心豊かに生きていくことのできる地域社会」を目指して、たゆまぬ努力が続けられてきました。

 この努力は、医療・福祉だけでなく、教育・文化・経済などあらゆる人間の生活を取り巻く地域社会づくりとして、官民ともに協力して試行錯誤しながら続けられてきました。

 しかし、この但馬地域の人口減少の問題は、想像以上に厳しい状況となりました。要支援者を支えようにも実際に働ける現場の人材が確保できない状況が顕在化しています。

 10年ほど前に、ある市の首長に「事業所の職員が定着せず、困っている」という福祉施設現場の現状をお話しすると、「人材確保の問題は各事業所の経営手腕の問題だ」と一蹴されたことがありました。

 そのあと、コロナ禍でエッセンシャルワーカーの社会的重要さが少しは認識されたようではありますが、福祉対象者は急速に増加していく一方で、それを支える福祉労働者は増える見込みがありません。

 地域の福祉ニーズに応えるには。各法人・各事業所が個別に努力を重ねるだけで乗り切れる時代はすでに終わり、これからは福祉職だけでなく、あらゆる分野が連携して地域社会を支える取り組みへのシフトチェンジが必要です。

 NPO法人但馬を結んで育つ会(TMS)の活動はまさに、それを具体化し、各事業所のみならず、各職種が手を携え、安心して住み慣れた但馬の地で暮らし、死んでいける、分水嶺を乗り越えた社会の福祉を実現するための活動を展開しています。

日本海新聞 2024年10月26日土曜日 026ページ

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