令和4年4月より、日本海新聞紙に”但馬を結んで育つ会リレーコラム ~地域の医療・福祉のあした~”が掲載されております。
令和6年5月は堀本 章治理事の寄稿です。
『消滅可能性自治体』
NPO法人但馬を結んで育つ会理事 堀本 章治
「消滅可能性自治体」-。ふと、今住んでいる町がなくなるのではないかと不安になります。実は、若年女性人口が2020年から50年までの30年間で50%以上減少する自治体のことを指しますが、但馬地域では豊岡市を除き全ての市町がこれに該当します。
「なんだ若年女性人口が半減するだけで、市町そのものが消滅するわけではないんだ」と少し安心されたかもしれませんが、これはとんでもないことで、例えば私が住んでいる新温泉町を例にとると、1年間に生まれる新生児は50人程度、高齢化率は全国平均を12ポイント以上も高い約41%となっており、町の経済、産業、福祉などを維持できる限界と言える状態です。
他方、今後10年間は、75歳以上の高齢者は約3千人で推移するのに対し、高齢者を支える生産年齢人口(20~64歳)は今から30%近く激減し、高齢者の方々が地域で安心して暮らし続ける限界に達します。
ではどうすればよいのでしょうか。よく若者の定住支援および地域交流の活性化などによる人口増が叫ばれていますが、どれも即効性や実効性に大きな課題があるものと思います。
やはり、今ある地域の医療や福祉の資源をネットワークなどで有機的に結び、情報を共有し、効率的な活動ができるような仕組みつくりにまず着手することが必要です。
例えば、医療について言えば、医療のネットワーク化によるリモート診療を導入すれば、高齢者の方が自宅にいながら内科・整形外科などいろいろな病気に対して専門医の診療が受けられ、これを薬剤師と連携すれば、宅配による薬の受け取りもできます。
さらに、この情報を福祉のケアマネジャーや訪問介護部門とリンクし情報共有すれば、介護が必要な高齢者の方への的確なサポートができるようになります。
また、高齢者施設などの介護の現場で働く方の絶対数の確保は今後ますます難しくなり、外国人材に頼ることが必要です。但馬地域の将来を考える時、ほとんどが消滅可能性自治体と分析されてもなお、この但馬でこれからもずっと暮らしていくために、もう待ってはいられません。
日本海新聞 2024年5月25日土曜日 024ページ
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