令和4年4月より、日本海新聞紙に‟但馬を結んで育つ会リレーコラム~地域の医療・福祉のあした~”が掲載されております。
令和6年8月は髙石俊一理事の寄稿です。
『認知症を受け入れて希望を』
認知症になりたくない、なってほしくない。と誰しも考えます。しかし、わが国における認知症の出現率は、65歳~75歳までは5%以下、75歳~80歳で10%程度で、80代になると急に増え始め、85歳以上では約半数に上っています。
65歳までに発症する若年性認知症になられる方もありますが、加齢が一番のリスクファクターで、男女ともに平均寿命が80歳を超えるようになった長寿社会のいま、認知症になることは特別なことではなく、誰にでも起こり得ることだと考えられます。
認知症の心配があるとき、できるだけ早期の診断を受けることが望ましいのですが、それは、治療により改善可能な病態を早く見つけて対処できること、認知症の程度や進行具合によって生活のあり方を検討し、支援体制をいろいろと準備できるからです。
豊岡病院認知症疾患医療センターのデータでも、認知症の診断を受けた方のうちアルツハイマー型認知症が約6割を占めます。認知症が相当進行してから受診される方がかなりいて、診断後はかかりつけ医による治療継続や介護支援サービスにつなげることが多いのですが、介護保険に該当しないような軽度認知症レベルの方に対しては、半年~1年ごとに通院していただいて経過をフォローすることや、当事者・家族ともに孤立を防ぎ、見守り支え合う集まりの場を紹介したりします。
認知症を治そう、食い止めようとするのではなく、認知症を受け止めよう、受け入れようとすることが肝要です。家族や介護者は、当事者ができなくなったことに目を向けて支援しようとします。それは生活維持に必要なことではあるのですが、ご本人ができることは時間がかかってもできるだけ続けられるように見守り、楽しいこと、自身が取り戻せること、希望が持てるような関わり方が望ましいです。
地域のさまざまな介護サービスも利用し、認知機能が低下しても、残された能力を活かし、張り合いがある生活をしていくことです。
日本海新聞 2024年8月31日土曜日 020ページ
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